2016/10/30付
平均年収が約150万円、16歳以上の労働参加率は50%。そんな市が米ミシガン州にある、と本紙の国際面が伝えていた。フリント市である。ゼネラル・モーターズ(GM)発祥の地で人口は一時20万人に上ったが、日本車などの席巻で一部の工場が閉鎖し、半減した。
▼斜陽の街を全米が注視したのは昨年に発覚した大規模な水道水の汚染のためだ。財政難から水源を替えた結果、劣悪な水質で古い管から鉛が流出、住民が腹痛や貧血などに見舞われた。今もペットボトルの水で体を洗っている人がいるという。黒人が人口の過半を占め、事態を放置した当局に「人種差別」と非難も上がる。
▼警官の数も削られ「最も危険な都市」の一つとなったこの街にも、大統領選の候補者らはやって来た。しかし、基幹産業の衰退をとどめる策も、高福祉のツケ解消も一朝一夕でかなうものではない。話題作りの一環なら寂しい。政治の光が届きにくい場所で、命や暮らしをどう守るのか。遠い外国のことだと見過ごせない。
▼日本では国勢調査の確定値で75歳以上が14歳以下を上回った。少子高齢化は刻々と進んでいる。財政への負荷は一段と増すが、負担増の議論は各論反対や選挙に不利の合唱にかき消されがちだ。インフラ老朽化も指摘され久しい。1強を誇り任期延長を勝ち得ても、先で待つ淵は深い。マリオのジャンプで我々を導けるか。
要約
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基幹産業が衰退した米ミシガン州フリント市は、昨年大規模な水道水の汚染があり全米が注視した。
財政難から水源を替えた結果、古い管から鉛が流出、住民が腹痛や貧血などに見舞われた。
黒人が人口の過半を占め、事態を放置した当局に「人種差別」と非難も上がる。
警官の数も削られ「最も危険な都市」の一つとなった。
この街にも大統領選の候補者らはやって来たが話題作りの一環なら寂しい。
遠い外国のことだと見過ごせない。
日本では少子高齢化は刻々と進み、75歳以上が14歳以下を上回った
財政への負荷は一段と増すが、負担増の議論はかき消されがちだ。
インフラ老朽化も指摘され久しい。
1強を誇り任期延長を勝ち得ても、先で待つ淵は深い。
マリオのジャンプで我々を導けるか。
[194/200文字]
基幹産業が衰退した米ミシガン州フリント市では、水道水の汚染があり、事態放置は過半を占める黒人への人種差別と非難もされる。
警官の数も削られ危険な都市となった。
大統領候補者らがやって来たが話題作りの一環か。
少子高齢化が進み、75歳以上が14歳以下を上回った日本。
財政負荷は増すが議論はかき消されがちで、インフラ老朽化も指摘され久しい。
日本のゆく先で待つ淵は深い。
1強を誇り任期延長を勝ち得ても、安倍首相は我々を導けるか。