2016/10/16付
タイが経済危機に見舞われた1997年。その行く末をあれこれ論じているうちに、華僑の友人がつぶやいた。「この国のためには死ねないけれど、国王のためなら死ねる」。劇画のセリフのようだ、と内心で苦笑しながら、敬愛の念の深さに胸を打たれた記憶がある。
▼おなじころ、たくさんの外国人記者を前にアナン元首相がプミポン国王をたたえて口にした一言も、耳に残っている。「かれは最高だ」。いずれも英語だったから理解できたのだが、おそらくタイ語ならばもっと熱烈で、ずっと敬意にあふれた口ぶりになったのだろう。とにもかくにも、プミポン国王の人気は絶大だった。
▼カリスマは一朝一夕にできたのではない。政府の高官から聞かされたことがある。「われわれが知らないへんぴな地方の名前をあげて、以前はこうだったが今はどうか、と聞いてくる。あれほど地方の実情に通じた人は政府内にいない」。かずかずの地方視察をはじめ王としての職責に精励した姿が、国民を魅了してきた。
▼70年にわたってタイに君臨してきたプミポン国王が世を去り、心のよりどころをなくした人たちのことが思いやられる。やはり20年ほど前にバンコクの女性が語ったことばを思い出す。「国王が亡くなったら、この国を離れるわ」。ほほ笑みの国と呼ばれるタイだが、カリスマなきあとの不安感が漂っているようにみえる。
要約
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タイが経済危機に見舞われた1997年。
その行く末をあれこれ論じているうちに、華僑の友人の敬愛の念の深さに胸を打たれた記憶がある。
おなじころ、たくさんの外国人記者を前にアナン元首相がプミポン国王をたたえて「かれは最高だ」と口にした。
プミポン国王の人気は絶大だった。
カリスマは一朝一夕にできたのではない。
政府の高官から「あれほど地方の実情に通じた人は政府内にいない」とも聞かされた。
かずかずの地方視察をはじめ王としての職責に精励した姿が、国民を魅了してきた。
70年にわたってタイに君臨してきたプミポン国王が世を去り、心のよりどころをなくした人たちのことが思いやられる。
ほほ笑みの国と呼ばれるタイに、カリスマなきあとの不安感が漂っているようにみえる。
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プミポン国王の人気は絶大だった。
カリスマは一朝一夕にできたのではない。
政府の高官に「あれほど地方の実情に通じた人は政府内にいない」と聞かされた。
かずかずの地方視察をはじめ王としての職責に精励した姿が、国民を魅了してきた。
70年にわたってタイに君臨してきたプミポン国王が世を去り、心のよりどころをなくした人たちのことが思いやられる。
ほほ笑みの国と呼ばれるタイに、カリスマなきあとの不安感が漂っているようにみえる。