2017/2/5付
けはいは見えるものらしい。窓際に置いた鉢のチューリップがみるみる伸びた。室内だからか思いのほか成長が早い。夜ふくらんだつぼみが、朝にはもう開いていた。薄紅の花びらのまわりだけが、あかるく華やいでいる。いち早く季節を見つけたようでうれしくなる。
▼外はまだ寒い。ビルの林をわたる風が耳をたたいていく。郊外では肌を刺すようなこがらしが吹いている。今年も列島には寒波がくりかえしやってきた。北海道や日本海側は記録的な大雪や低温に見舞われている。ゆるんだかと思うと、もどってくる。こんな冷え込みがいつまでも続くと、春ははるかに遠い気がしてくる。
▼俳人の高浜虚子は、じっと眺めることが大事だと説いた。この時節、鎌倉を歩き、神社の横の溝を見つめていた。雪国を思わせるほど風は冷たい。小石を投げ入れると、ぽかぽか柔らかい泥が浮いた。その姿に「水温(ぬる)む」春を見つけた。大地の下から押し上げてくる力が温めていると感じたという(「俳句の作りよう」)。
▼「東より春は来ると植ゑし梅」(虚子)。立春が過ぎ、東風が氷を解かすころである。観察していれば、兆しもわかる。やがて街も野も春めいてくる。政治の世界は勝手が違うようだ。「嘘つきめ!」。東の国からは、罵声や横紙破りの音が鳴り響く。じっと見ているだけでは、この国にも寒々しい暴風が吹きつけてくる。
要約
[298/300文字]
けはいは見えるものらしい。
夜ふくらんだチューリップのつぼみが、朝にはもう開いていた。
いち早く季節を見つけたようでうれしくなる。
外はまだ寒い。
今年も列島には寒波がくりかえしやってきた。
こんな冷え込みが続くと、春は遠い気がしてくる。
高浜虚子は、じっと眺めることが大事だと説いた。
風は冷たいが神社の横の溝に小石を投げ入れると、柔らかい泥が浮いた。
その姿に春を見つけた。
大地の下から押し上げてくる力が温めていると感じたという。
立春が過ぎ、東風が氷を解かすころである。
観察していれば、兆しもわかる。
やがて春めいてくる。
政治の世界は勝手が違うようだ。
東の国からは罵声や横紙破りの音が鳴り響く。
じっと見ているだけでは、日本にも寒々しい暴風が吹きつけてくる。
[197/200文字]
けはいは見えるものらしい。
夜ふくらんだチューリップのつぼみが、朝にはもう開いていた。
今年も列島には寒波がくりかえしやってきた。
こんな冷え込みが続くと、春は遠い気がしてくる。
高浜虚子は、じっと眺めることが大事だと説いた。
立春が過ぎ、東風が氷を解かすころである。
観察していれば、春の兆しもわかる。
政治の世界は勝手が違うようだ。
東の国からは罵声や横紙破りの音が鳴り響く。
じっと見ているだけでは、日本にも寒々しい暴風が吹きつけてくる。