2016/11/3付
あれは三年前、とサビに入るのは昭和歌謡の金字塔「喝采」だ。恋した人の運命を変えた歳月へのほろ苦い思いが胸にしみ入る。歌の登場人物と同様、この人にとっての3年半余も複雑で、割り切れぬ心境の下にあったのではないか。日本銀行の黒田東彦総裁である。
▼異次元緩和を繰り出すも、経済の体温は上がらぬまま。1日の記者会見では財政出動や構造改革など、政治側の努力との相乗効果の大切さを強調した。デフレ脱出の道を探しあぐねて、また1丁目1番地に戻った感がある。残る任期の1年半後も物価上昇目標は未達の見込みといい「責任をどう考えるか」との質問も出た。
▼「できることが限られてきた」と本紙にあった。手詰まり感はあらわだが、賃金の上昇や働き方改革といった援護なしに、重い岩盤は崩れまい。後任の総裁をも巻き込んだ長い戦いだ。中央銀行の「空手形」とならぬよう見守る必要がある。一方、東京都庁を巡る手形も期限が迫ってきた。豊洲市場や五輪の施設見直しだ。
▼豊洲では盛り土せずの決定に責任があるとして8人が指弾されたものの、移転はメドが立たない。中ぶらりんの業者も我慢の限界だ。施設見直しは劇場型で事を進め、裾を踏まれる場面もあった。「出会う災いはおろそかにした時間の報いだ」。ナポレオンの言葉という。3年後に冒頭のひと節で慨嘆していませんように。
要約
[297/300文字]
日本銀行の黒田東彦総裁にとっての3年半余は複雑で、割り切れぬ心境の下にあったのではないか。
1日の記者会見では財政出動や構造改革など、政治側の努力との相乗効果の大切さを強調した。
手詰まり感はあらわだが、賃金の上昇や働き方改革といった援護なしに、重い岩盤は崩れまい。
異次元緩和を繰り出すも、デフレ脱出の道を探しあぐね、任期中の物価上昇目標は未達の見込みという。
後任の総裁をも巻き込んだ長い戦いだ。
一方、東京都庁の豊洲市場や五輪の施設見直しも期限が迫ってきた。
豊洲では盛り土せずの決定の責任で8人が指弾されたが、移転はメドが立たず中ぶらりんの業者も我慢の限界だ。
「出会う災いはおろそかにした時間の報いだ」というナポレオンの言葉を考える。
[196/200文字]
日銀の黒田総裁は1日の記者会見で、政治側の努力との相乗効果の大切さを強調。
手詰まり感はあらわだが、財政出動や構造改革などは必須だ。
任期中の物価上昇目標は未達の見込みで、後任の総裁をも巻き込んだ長い戦いだ。
東京都庁の豊洲市場や五輪の施設見直しも期限が迫る。
豊洲の盛り土問題で8人が指弾されたが、移転のメドが立たず中ぶらりんの業者も我慢の限界だ。
「出会う災いはおろそかにした時間の報いだ」というナポレオンの言葉を考える。