2016/9/14付
平安後期、鳥羽上皇の身辺を警護する武人の1人に佐藤義清(のりきよ)がいた。
儀式の作法や庶民の歌謡である今様に詳しく、まさに文武両道。将来を期待されたが、20代前半で突然、出家してしまう。泣きすがる幼い娘を縁から蹴落とした、と記録に残る。歌人、西行の誕生だ。
▼親友の死や高貴な女性への実らぬ恋――。世を捨てた理由は種々に取り沙汰される。だが、その漂泊の生涯は、心の機微や自然の情景を伸びやかに詠んだ歌の数々に実を結んだ。今の季節なら「いかばかりうれしからまし秋の夜の月すむ空に雲なかりせば」の作品が残る。独特の視点からにじむ風情は現代でも色あせない。
▼「願はくは花のしたにて春死なん」の歌は多くの人の憧れの境地へと昇華した感さえある。小林秀雄は西行の歌について「いかにも、やすやすと詠み出されている様に見えて、陰翳(いんえい)は深く濃い」などと評した。平明さの中に、多彩な含意とコミュニケーション力を秘めるということか。筆を執る身なら達すべき高みだろう。
▼日銀は近く金融緩和策の「総括的な検証」をするそうだ。異次元と呼ばれるほどの領域に踏み込んでおよそ3年半。市場や国民はもはや大仰な言葉や紋切り型では納得しない。副作用や出口も丁寧に説いてもらいたいところだ。将来への不安という「雲」をはらえれば、西行も歌ったように「いかばかりうれしからまし」。
要約
[280/300文字]
平安後期、鳥羽上皇の身辺を警護する武人の1人に佐藤義清(のりきよ)がいた。
歌人、西行だ。
その漂泊の生涯は、心の機微や自然の情景を伸びやかに詠んだ歌の数々に実を結んだ。
独特の視点からにじむ風情は現代でも色あせない。
平明さの中に、多彩な含意とコミュニケーション力を秘めるということか。
筆を執る身なら達すべき高みだろう。
日銀は近く金融緩和策の「総括的な検証」をするそうだ。
異次元と呼ばれるほどの領域に踏み込んでおよそ3年半。
市場や国民はもはや大仰な言葉や紋切り型では納得しない。
副作用や出口も丁寧に説いてもらいたいところだ。
将来への不安という「雲」をはらえれば、西行も歌ったように「いかばかりうれしからまし」。
[186/200文字]
歌人西行の漂泊の生涯は、心の機微や自然の情景を伸びやかに詠んだ歌の数々に実を結んだ。
独特の視点からにじむ風情は現代でも色あせない。
平明さの中に、多彩な含意とコミュニケーション力を秘めるということか。
日銀は近く金融緩和策の「総括的な検証」をするそうだ。
異次元と呼ばれるほどの領域に踏み込んでおよそ3年半。
市場や国民はもはや大仰な言葉や紋切り型では納得しない。
副作用や出口も丁寧に説いてもらいたい。