2016/10/3付
明け方の5時すぎに作業が始まり、終業は夜9時。その間、朝昼晩の食事時間があるが15分ずつと短く、休憩はない――。明治期の、ある製糸場の女子従業員の1日だ。労働時間は15時間を超えた。徹夜の仕事も珍しくなかった。過労で倒れる人がいたのも当然だろう。
▼過酷な工場労働を改善しようと大正5年(1916年)、女性と15歳未満を対象に、労働時間に制限をかけ深夜労働も禁じる工場法が施行された。といっても1日12時間を超える就業の禁止という緩い法律で、深夜勤務についても交代制を採るなら向こう15年間認められた。企業が労働時間規制に強く反対したためという。
▼長時間労働を抑えようとした最初の法律の施行から今年で100年。だが残念ながら、十分に効果のある制度は今もできていない。労働基準法は働く人の1日の労働時間を8時間までと定めるが、企業の労使が協定を結び、残業を青天井で延ばせる仕組みがある。過重労働によるうつ病や過労死は大きな問題になっている。
▼働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置づけ、なかでも長時間労働の是正を重点課題に掲げる政府には、ぜひとも実効性のある対策を期待したいものだ。100年前の工場法は甘い内容だったため、その後も大正14年刊の「女工哀史」に描かれたような、過酷な労働実態が残った。歴史を振り返り的確な手を打つときだ。
要約
[290/300文字]
明治期の、ある製糸場の女子従業員の労働時間は15時間を超えた。
徹夜の仕事も珍しくなかった。過労で倒れる人がいたのも当然だろう。
過酷な工場労働を改善しようと大正5年、労働時間に制限をかけ深夜労働も禁じる工場法が施行された。
といっても1日12時間を超える就業の禁止、深夜勤務についても交代制を採るなら向こう15年間認められた。
企業が労働時間規制に強く反対したためという。
今の労働基準法は1日の労働時間を8時間までと定めるが、残業を青天井で延ばせる。
過重労働によるうつ病や過労死は大きな問題になっている。
長時間労働の是正を重点課題に掲げる政府には、ぜひとも実効性のある対策を期待したい。
歴史を振り返り的確な手を打つときだ。
[194/200文字]
明治期の労働時間は15時間を超えた。
徹夜も珍しくなく過労で倒れる人がいた。
大正5年、労働時間に制限をかける工場法が施行されたが、1日12時間を超える就業の禁止という緩い法律。
今の労働基準法は1日の労働時間を8時間までと定めるが、残業を青天井で延ばせる。
過重労働によるうつ病や過労死は大きな問題だ。
長時間労働の是正を重点課題に掲げる政府には、ぜひとも実効性のある対策を期待したい。
歴史を振り返り的確な手を打つときだ。