2016/12/2付
おおよそ10年前のことだ。ロシアの情報機関の元職員だったアレクサンドル・リトビネンコ氏が、亡命先の英国で暗殺された。プーチン政権は否定しているけれど、ロシアの当局者がポロニウムという放射性物質を使って毒殺した、との見方が世界的には定着している。
▼ポロニウムを最初にみつけたのは、放射能が原子に由来するという画期的な発見をなし遂げて間もないキュリー夫妻だった。この元素の名前は、マリー夫人の祖国ポーランドにちなんでいる。当時は、ほかでもない帝政ロシアの支配下にあった。巡り巡ってロシア当局の暗殺の道具になったとすれば、皮肉というほかない。
▼神さまの名前だったり、物質の色だったり、地名だったり……。元素の名前の由来はさまざまだ。キュリー夫妻にちなむキュリウムのように、偉大な科学者の名前による例も目につく。意外にも国名から来ているのはそれほど多くない。フランスから生まれたフランシウム、米国から生まれたアメリシウムくらいだろうか。
▼理化学研究所のチームがみつけた113番元素の名前が、正式にニホニウムに決まった。数少ない「国名由来組」となるわけで、日本人として誇らしく感じる。とはいえ、大切なのは名前ではない。科学の成果で、より多くの人を幸せにし、不幸な人を減らすことだろう。せつないポロニウムの歴史が、そんな思いを誘う。
要約
[299/300文字]
おおよそ10年前ロシアの情報機関の元職員が、亡命先の英国で暗殺された。
ロシアの当局者がポロニウムで毒殺した、との見方が定着している。
ポロニウムを最初にみつけたのはキュリー夫妻だった。
この元素の名前は、祖国ポーランドにちなんでいる。
神さまの名前だったり、物質の色だったり、地名だったり……。
元素の名前の由来はさまざまだ。
国名から来ているのはそれほど多くない。
フランシウム、アメリシウムくらいだろうか。
理化学研究所のチームがみつけた113番元素の名前が、正式にニホニウムに決まった。
日本人として誇らしく感じる。
とはいえ、大切なのは名前ではない。
科学の成果で、より多くの人を幸せにし、不幸な人を減らすことだろう。
せつないポロニウムの歴史が、そんな思いを誘う。
[180/200文字]
ポロニウムを最初にみつけたキュリー夫妻は、祖国ポーランドにちなんでこの元素に名前をつけた。
元素の名前の由来はさまざまだ。
国名から来ているのはフランシウム、アメリシウムくらいだろうか。
理化学研究所のチームがみつけた113番元素の名前が、正式にニホニウムに決まった。
日本人として誇らしく感じる。
とはいえ、大切なのは名前ではない。
科学の成果で、より多くの人を幸せにし、不幸な人を減らすことだろう。