2017/4/17付
伊丹十三監督の映画「タンポポ」は本筋を離れた小話が面白い。そのひとつに、企業の幹部が取引先の重役連をフランス料理でもてなす段がある。分厚いメニューを渡され、みんな無難に舌平目のムニエルとビール。ところが末席の平社員がひとりそれに従わないのだ。
▼「クネールのブーダン風というのは、たしかフランスのタイユバンの……」「きょうはどういうものか、コルトン・シャルルマーニュが飲みたくて」。堂に入った注文ぶりの若造に、オヤジたちは渋い顔である。いわば空気の読めぬKY君だが、監督は何事も右へ倣えの日本的サラリーマン社会をチクリとやったのだろう。
▼ここまで極端でなくとも、周囲に染まらない者へのまなざしは昔も今も同じだ。むしろ、気働きを求める世の風潮は強まってさえいよう。理不尽なほどに感情の制御を強いられる「感情労働」はサービス業の現場だけでなく、われらが会社主義の宿痾(しゅくあ)である。新入社員を苦しめるのは仕事自体よりも「空気」ではないのか。
▼働き方を変えるべく、政府も企業も躍起になっている。長時間労働をやめて、ワークライフバランスを大事にと誰もが唱える。もっともなことだが、人々に深く根ざした横並びメンタリティーをどうしよう。さて、きょうはランチタイムにそんな話でも新人とするか。おい、みんな日替わり定食でいいな……とは言うまい。
要約
[289/300文字]
映画「タンポポ」は本筋を離れた小話が面白い。
企業の幹部が取引先の重役連をフランス料理でもてなす段で、末席の平社員がひとりそれに従わない。
監督は何事も右へ倣えの日本的サラリーマン社会をチクリとやったのだろう。
ここまで極端でなくとも、周囲に染まらない者へのまなざしは昔も今も同じだ。
むしろ、気働きを求める世の風潮は強まってさえいる。
理不尽なほどに感情の制御を強いられる「感情労働」は会社主義の宿痾である。
新入社員を苦しめるのは仕事自体よりも「空気」ではないのか。
働き方を変えるべく、政府も企業も躍起になっている。
長時間労働をやめて、ワークライフバランスを大事にと唱えるが、人々に深く根ざした横並びメンタリティーをどうしよう。
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周囲に染まらない者へのまなざしは昔も今も同じだ。
むしろ、気働きを求める世の風潮は強まってさえいる。
理不尽なほどに感情の制御を強いられる「感情労働」は会社主義の宿痾である。
新入社員を苦しめるのは仕事自体よりも「空気」ではないのか。
働き方を変えるべく、政府も企業も躍起になっている。
長時間労働をやめて、ワークライフバランスを大事にと唱えるが、人々に深く根ざした横並びメンタリティーをどうしよう。