2017/5/11付
激動の現代史が歩いているような人である。韓国の新しい大統領になった文(ムン)在寅(ジェイン)氏のことだ。両親は1950年からの朝鮮戦争で半島の北から南へ逃れた。文氏は貧しかった少年期を釜山で過ごし、大学時代には朴(パク)正熙(チョンヒ)大統領の独裁に反発して逮捕・収監もされている。
▼軍隊時代には板門店での特殊作戦に参加。除隊した後、全(チョン)斗煥(ドファン)氏が大統領の時代には弁護士として労働者の支援に取り組んだ。盟友の盧(ノ)武鉉(ムヒョン)氏が国のトップに立つと、側近として支えている。庶民の暮らしが政治の乱れや経済的な格差にいかに翻弄されるか身をもって知る苦労人なのだろう。多くの支持を集めたゆえんか。
▼まさに一衣帯水の日韓である。稲作や仏教が半島から伝わったとされる遠い遠い過去の交流を礎に、時に争ったり、統治下に置いたりした負の歴史をも乗り越える努力が続いてきた。その一つが一昨年の「従軍慰安婦合意」だったろう。「最終的かつ不可逆的な解決」をうたったはずが、文氏は再交渉を訴えているという。
▼北朝鮮に対しても融和の路線を選ぶようだ。相次ぐ無謀な挑発に日米韓が足並みをそろえてこそ包囲網は機能する。核やミサイルを振りかざす相手への歩み寄りは、あしき前例になりはしないか。文氏は今や、国の総監督の立場である。多くの人に自らのような波乱の半生を歩ませてしまっては、失政のそしりは免れまい。
要約
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韓国の新しい大統領になった文在寅氏は、庶民の暮らしが政治の乱れや経済的な格差にいかに翻弄されるか身をもって知る苦労人なのだろう。
多くの支持を集めたゆえんか。
一衣帯水の日韓は負の歴史をも乗り越える努力が続いてきた。
その一つが一昨年の「従軍慰安婦合意」だったろう。
「最終的かつ不可逆的な解決」をうたったはずが、文氏は再交渉を訴えているという。
北朝鮮に対しても融和の路線を選ぶようだ。
相次ぐ無謀な挑発に日米韓が足並みをそろえてこそ包囲網は機能する。
核やミサイルを振りかざす相手への歩み寄りは、あしき前例になりはしないか。
文氏は今や、国の総監督の立場である。
多くの人に自らのような波乱の半生を歩ませてしまっては、失政のそしりは免れまい。
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韓国新大統領文在寅氏は、苦労人だったから多くの支持を集めたのだろう。
しかし「従軍慰安婦合意」は「最終的かつ不可逆的な解決」をうたったはずが、文氏は再交渉を訴えているという。
また、相次ぐ無謀な挑発を行う北朝鮮には融和の路線を選ぶようで、日米韓包囲網の足並みがそろわない。
この歩み寄りはあしき前例になりはしないか。
文氏は今や、国の総監督の立場である。
多くの人に自らのような波乱の半生を歩ませてしまっては、失政のそしりは免れまい。