2017/8/3付
大学の医学部を舞台にした山崎豊子の小説「白い巨塔」の一場面だ。X線写真からごく初期のがんを見つけた技量を、外科医の財前が自ら誇る。「微妙な陰影の読影は、いうなれば科学ではなく、一種の芸術なんだよ」。続けて「優れた勘と鋭い洞察力が必要だがね」。
▼多くの医師が場数を踏んで鍛え上げ、受け継いできた読影のノウハウも、人工知能(AI)による「画像診断」に取って代わられそうな昨今である。日本消化器内視鏡学会の動きを本紙が先月報じていた。全国の病院から32万件もの画像を集め、家族の病歴なども加えてデータベースを作成し、AIに学ばせるというのだ。
▼異常が疑われる患者を見分ける機能は3年後には実現できそうという。医師の負担は減り、どの病院でも高水準の診断が可能になるなど、良いことずくめに見える。自動運転も高速道路での実用化は間近だし、先日はニュースや天気予報を読むAIをラジオ局が導入する、と伝えられた。記事や小説だって書き始めている。
▼一定の技能が必要な行いを次々とAIがこなす。そんな未来はすぐそこのようだ。だとすれば人間に残された仕事は何か。「白い巨塔」では医師らの野心、嫉妬、うぬぼれに満ちた言動が執拗に描かれる。情念もあらわな「人間くさい」振る舞いが主役になるなら寂しい。AI時代、自らを捉え直すことが求められている。
要約
[292/300文字]
X線写真からごく初期のがんを見つける読影のノウハウも、AIによる「画像診断」に取って代わられそうな昨今である。
日本消化器内視鏡学会の動きを本紙が先月報じていた。
異常が疑われる患者を見分ける機能は3年後には実現できそうという。
医師の負担は減り、どの病院でも高水準の診断が可能になるなど、良いことずくめに見える。
自動運転も高速道路での実用化は間近だし、先日はニュースや天気予報を読むAIをラジオ局が導入する、と伝えられた。
記事や小説だって書き始めている。
一定の技能が必要な行いを次々とAIがこなすならば人間に残された仕事は何か。
情念もあらわな「人間くさい」振る舞いが主役になるなら寂しい。
AI時代、自らを捉え直すことが求められている。
[194/200文字]
異常が疑われる患者をAIによる「画像診断」で見分ける機能は3年後には実現できそうという。
医師の負担は減り、どの病院でも高水準の診断が可能になるなど、良いことずくめに見える。
自動運転の実用化も間近だし、ニュースや天気予報を読むAIをラジオ局が導入した。
記事や小説だって書き始めている。
AIが次々と仕事をこなし、人間に残されるのが情念もあらわな「人間くさい」振る舞いになるなら寂しい。
AI時代、自らを捉え直すことが求められている。