2017/3/14付
指導者を選んだり政策を決めたりするうえで、完全に民主的な仕組みはありえない――。みもふたもない理屈である。これを理論的に証明したとされるのが、2月下旬に亡くなった米国の経済学者、ケネス・アロー氏だ。社会選択に関する「不可能性定理」などという。
▼正直なところ高度な数学を駆使した証明は手に余るのだが、その結論はすんなりと胸におちる。というより、多少なりとも世の風に当たってきた大人なら、直観か常識でわかっていることだろう。人の営みに完全なんてありえない、と。だからこそ、たゆまぬ改善をこころがけ、すこしでも実行していくしかないのだ、と。
▼「真実はかならず明らかになる、と信じている」。弾劾によって罷免された韓国の朴(パク)槿恵(クネ)前大統領は12日の夜、青瓦台(大統領府)を去るにあたってこんな声明を出した。憲法裁判所の判断を正面から受けとめていない、として韓国ではあまり評判がよくないらしい。とはいえ無念の思いが伝わってくるひとことではある。
▼韓国で「第6共和国」と呼ばれる今の政治体制がはじまったのは、1988年、ソウル五輪の年だった。それからおよそ30年。この間の6人の大統領は、大半が退任した後、ときには在任中に、親族あるいは本人の汚職スキャンダルに見舞われた。もとより完全な仕組みは無理としても、改善の余地は大きいのではないか。
要約
[295/300文字]
指導者を選んだり政策を決めたりするうえで、完全に民主的な仕組みはありえないことを理論的に証明したとされるのが、米国の経済学者、ケネス・アロー氏だ。
社会選択に関する「不可能性定理」という。
多少なりとも世の風に当たってきた大人なら、人の営みに完全なんてありえないと、直観か常識でわかっていることだろう。
だからこそ、改善をこころがけ、実行していくしかないのだ、と。
韓国で「第6共和国」と呼ばれる今の政治体制がはじまったのは、1988年、ソウル五輪の年だった。
それからおよそ30年。
この間の6人の大統領は、大半が退任した後、ときには在任中に、親族あるいは本人の汚職スキャンダルに見舞われた。
もとより完全な仕組みは無理としても、改善の余地は大きいのではないか。
[199/200文字]
指導者選択や政策決定で、完全に民主的な仕組みはないと理論的に証明したのが、米国の経済学者、ケネス・アロー氏だ。
世の風に当たってきた大人なら直観か常識でわかっていることだ。
だからこそ、改善をこころがけ、実行していくしかない。
韓国で「第6共和国」と呼ばれる政治体制がはじまってからおよそ30年。
この間の6人の大統領は、親族あるいは本人の汚職スキャンダルに見舞われた。
もとより完全な仕組みは無理としても、改善の余地は大きいのではないか。