2017/1/28付
1953年は冷戦が深まった年である。このころ、米国とソ連は核兵器の開発競争にしのぎを削り、相次いで水爆実験に踏み切っていた。第2次大戦の直後から「世界終末時計」を公表してきた米科学誌は、破滅までの残り時間を「2分」に縮めて警鐘を鳴らしている。
▼今年は、それ以来の危機だという。「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」誌が示す時計は、午前0時の地球最後の日まで残り「2分半」。昨年より30秒進んだ。冷戦終結期には十数分前まで巻き戻されていたのが幻のようである。こんど針を進めた犯人のひとりは、もちろん米国のトランプ大統領だ。
▼排外主義と敵意の拡散で大衆を引きつけ、外交も安全保障も「取引」の対象にする指導者がいま、核のボタンを手にしている。人類に牙をむく地球温暖化の防止にも後ろ向きで、およそこの星の行方についての洞察は感じ取れぬ人なのだ。就任から1週間。次々と署名した大統領令が変えていく世界を想像するだけで怖い。
▼それでも株式市場はにぎわい、今週はダウ平均が初めて2万ドルを超えた。公約を次々と実行に移す「腕力」への期待が根強いようだ。水晶玉に映る未来よりも、いまは水晶玉自体のオーラが魅力なのだろうか。米誌が終末時計の進行を1分未満にとどめたのは、就任からまだわずかしかたっていないための様子見だという。
要約
[298/300文字]
1953年は冷戦が深まった年の「世界終末時計」は、破滅までの残り時間が「2分」に縮まった。
今年は、それ以来の危機だという。
昨年より30秒進み残り「2分半」。
こんど針を進めた犯人のひとりは、もちろん米国のトランプ大統領だ。
排外主義と敵意の拡散で大衆を引きつけ、外交も安全保障も「取引」の対象にする指導者がいま、核のボタンを手にしている。
人類に牙をむく地球温暖化の防止にも後ろ向き。
就任から1週間。
次々と署名した大統領令が変えていく世界を想像するだけで怖い。
それでも株式市場はにぎわい、今週はダウ平均が初めて2万ドルを超えた。
公約を次々と実行に移す「腕力」への期待が根強いようだ。
米誌が終末時計の進行を1分未満にとどめたのは、就任からまだわずかで様子見だからいう。
[200/200文字]
今年は、冷戦が深まった1953年以来の危機だという。
「世界終末時計」が昨年より30秒進み、残り「2分半」。
針を進めた犯人のひとりは、米国のトランプ大統領だ。
進行が1分未満なのは、就任からまだわずかで様子見だからいう。
排外主義と敵意を拡散、外交も安全保障も「取引」の対象にする。
地球温暖化の防止にも後ろ向き。そんな大統領が核のボタンを持つ。
それでも株式市場はにぎわい、今週はダウ平均が初めて2万ドルを超えた。
公約を次々と実行に移すことへの期待が根強い。