2017/2/26付
「降る雪や明治は遠くなりにけり」。昔を懐かしんだ俳人、中村草田男に、ただならぬ雪の句がある。「此日(このひ)雪一教師をも包み降る」「頻(しき)り頻るこれ俳諧の雪にあらず」「世にも遠く雪月明の犬吠(ほ)ゆる」。81年前の二・二六事件当日詠んだ連作には不穏な感じがただよう。
▼首都を血に染めたクーデターの試みは、4日間で治まった。戒厳令で報道は制限され、雪の中で何が起きたか伝わらない。根も葉もないデマやうわさがひろがった。反乱軍の仲間は全国にいる。戒厳軍が毒ガスを発射した。風評が空想をかきたて、新たなテロへの不安をふくらませた。実態がわかってくるのは戦後である。
▼非常時でもないのに、デマが世界をかけめぐる。ウソで相手を攻める政治も幅をきかせる。トランプ米大統領は都合の悪い報道を「偽ニュース」とよぶ。一方で、でまかせ発言をやめない。“つぶやき”情報があふれ、事実より気分が大事との風潮に乗じているからだろう。これでは、そのうち何がホントか分からなくなる。
▼暗く重たい「昭和の雪」も遠くなった。経験をかさねて賢くなったはずだが、ときに、人はデマやうわさにまどわされる。根っこの弱さは相変わらずだ。ひどい吹雪では、空と地面を区別できず、どこにいるかも分からなくなる。いまはニセの情報が雪のように降りつもる。よほど気をつけなければ、道を見失ってしまう。
要約
[297/300文字]
81年前の二・二六事件当日中村草田男が詠んだ雪の句の連作には不穏な感じがただよう。
クーデターの試みは、4日間で治まった。
戒厳令で報道は制限され、雪の中で何が起きたか伝わらない。
風評が空想をかきたて、新たなテロへの不安をふくらませた。
実態がわかってくるのは戦後である。
トランプ米大統領は都合の悪い報道を「偽ニュース」とよぶ一方で、でまかせ発言をやめない。
事実より気分が大事との風潮に乗じている。
これでは、何がホントか分からなくなる。
人はデマやうわさにまどわされる。
根っこの弱さは相変わらずだ。
ひどい吹雪では、空と地面を区別できず、どこにいるかも分からなくなる。
いまはニセの情報が雪のように降りつもる。
よほど気をつけなければ、道を見失ってしまう。
[197/200文字]
81年前の二・二六事件の時、戒厳令で報道は制限、雪の中で何が起きたか伝わらない。
風評が空想をかきたて、新たなテロへの不安をふくらませた。
トランプ米大統領は都合の悪い報道を「偽ニュース」とよぶ一方で、でまかせ発言をやめない。
これでは、何がホントか分からなくなる。
人はデマやうわさにまどわされる。
根っこの弱さは相変わらずだ。
吹雪ではどこにいるかも分からなくなり、ニセの情報が雪のように降りつもる。
気をつけなければ、道を見失ってしまう。