[春秋要約161104]戦場を舞台に人間の愚かさをも語りかけた直木賞作家、伊藤桂一さんが99歳で死去。<38文字> #sjdis #sjyouyaku

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

2016/11/4付

悪が栄え、善が滅びる。世の中は理不尽なことが多い正義の人が悲運のうちに、倒れることもある。どうしようもないが、事実を書きとめよう。死者の魂を慰め、後世に訴えることはできるはずだ。歴史の父、司馬遷は「史記」をまとめた理由をこう書き残している
▼直木賞作家、伊藤桂一さんにも通じる。21歳で入隊し、砲弾飛び交う中国の戦場で7年近くを過ごした。仲間は次々に倒れた。いつ死んでもおかしくない。すべては運だと覚悟した。所属した師団は、除隊後にニューギニアに渡って玉砕している。生き残った者の使命を痛感し、将兵の戦いぶり、無念の思いを描いてきた。
▼戦場の語り部になろうと決意する。取材と執筆に集中した。世間的な出世は断念した。家庭生活の幸せも願わない。生活のための勤めや妻子に力をそがれるのを恐れたからだ、という。いつも戦中を意識した。僧家の生まれで「行者的な生き方には向いている」と節制に努めた。思い通り、99歳の長命を保って亡くなった。
▼代表作「静かなノモンハン」には、10年かかった。凄絶な戦闘の経験者の話をもとに磨きあげた。叙事詩のような作品だ。あまりに無責任な上層部のもとで、無力な兵士がいかに懸命に働いたか。しみじみと伝わってくる。戦場を描いた作品群は、死者を弔うだけではない。人間の愚かさを未来の読者にも語りかけている

要約

[285/300文字]
直木賞作家、伊藤桂一さんは21歳で入隊し、砲弾飛び交う中国の戦場で7年近くを過ごした。
いつ死んでもおかしくない。
すべては運だと覚悟した。
所属した師団は、除隊後にニューギニアに渡って玉砕している。
生き残った者の使命を痛感し、戦場の語り部になろうと決意する。
取材と執筆に集中した。
世間的な出世は断念し、家庭生活の幸せも願わない。
いつも戦中を意識した。
僧家の生まれで「行者的な生き方には向いている」と節制に努め、99歳で亡くなった。

代表作「静かなノモンハン」には、10年かかった。
凄絶な戦闘の経験者の話をもとに磨きあげた叙事詩のような作品だ。
戦場を描いた作品群は、死者を弔うだけではない。
人間の愚かさを未来の読者にも語りかけている。

[200/200文字]
99歳で亡くなった直木賞作家、伊藤桂一さんは21歳から中国の戦場で7年近くを過ごした。
所属した師団は、除隊後にニューギニアに渡って玉砕。
生き残った者の使命を痛感し、戦場の語り部になろうと決意する。
いつも戦中を意識し、取材と執筆に集中した。

代表作「静かなノモンハン」には、10年かかった。
凄絶な戦闘の経験者の話をもとに磨きあげた叙事詩のような作品だ。
戦場を描いた作品群は、死者を弔うだけではない。
人間の愚かさを未来の読者にも語りかけている。