[春秋要約170528]自給率1割強で輸入頼りの小麦。稲の国に栄える麦の文化に思いをめぐらせよう。<38文字> #sjdis #sjyouyaku

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2017/5/28付

 田植えが終わったばかりの瑞々(みずみず)しい光景のなかに、黄金色の「秋」が混じっている。埼玉県の北部、加須や羽生あたりを歩くと出合うのは、新緑と好対照をなす収穫期の麦畑だ。5月の風に揺れる、熟れた穂。のっぺらぼうの関東平野だが麦秋のこの風情は捨てがたい。
▼コメと違って、麦はじつにさまざまな食べ物に姿を変える。パンに麺類、お好み焼き、ケーキ、ギョーザの皮。だからだろう。しょっちゅう食卓に乗るのに、おにぎりと田んぼが結びつくようには麦畑が連想できないのだ。しかしこういう景色を前にしてふと気づく。われら日本人も麦にはお世話になりっぱなしだと――。
▼大半を輸入に頼っているのも、麦の実情である。小麦の自給率はわずか1割強で、コメとは比較にならない。それでも最近はパンに向く国産の超強力粉「ゆめちから」が評判を呼び、パスタに適した新品種も登場した。地粉で打った土地土地の麺も人気だ。麦作の歴史が古い北関東の町々は、粉ものグルメで客集めを競う。
▼穀物といえばまずは稲の国に、しぶとく栄える麦の文化。梅雨を控えたこのいっとき、またどこかを訪ねて思いをめぐらせてみようか。胸に浮かぶのは、小津安二郎監督「麦秋」のラストシーンである。題名どおりのその情景を撮るのに、名匠はまる一日を費やしたという。輝ける麦の穂に、心を奪われていたに違いない。

要約

[294/300文字]
田植えが終わったばかりの瑞々しい光景のなか、新緑と好対照をなす収穫期の麦畑の熟れた穂。

コメと違って、麦はじつにさまざまな食べ物に姿を変えるからだろう。
おにぎりと田んぼが結びつくようには麦畑が連想できないのだ。
しかし、われら日本人も麦にはお世話になりっぱなしだ。

大半を輸入に頼っているのも、麦の実情である。
小麦の自給率はわずか1割強で、コメとは比較にならない。
それでも最近は国産の超強力粉やパスタに適した新品種も登場した。
地粉で打った麺も人気だ。
麦作の歴史が古い北関東の町々は、粉ものグルメで客集めを競う。

穀物といえばまずは稲の国に、しぶとく栄える麦の文化。
梅雨を控えたこのいっとき、またどこかを訪ねて思いをめぐらせてみようか。

[196/200文字]
田植えが終わったばかりの瑞々しい光景のなか、新緑と好対照をなす収穫期の麦畑の熟れた穂。

われら日本人も麦にはお世話になりっぱなしだ。

大半を輸入に頼っているのも、麦の実情である。
小麦の自給率はわずか1割強で、コメとは比較にならない。
それでも麦作の歴史が古い北関東の町々は、粉ものグルメで客集めを競う。

穀物といえばまずは稲の国に、しぶとく栄える麦の文化。
梅雨を控えたこのいっとき、またどこかを訪ねて思いをめぐらせてみようか。