2016/12/5付
大きな台風は別として、強風で立ち木が折れるという光景はあまり見たことがない。木の細胞を形作る繊維が強じんだからだそうだ。東日本大震災の津波に耐えた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」も、残った理由の一つには樹木がもともと持つ強さがあるのだろう。
▼いま企業の間では、その自然の力を生かした新素材が注目されている。木材を加工処理して取り出した繊維で、「セルロースナノファイバー」という。細さは髪の毛の1万分の1、重さは鉄の5分の1ほど。一方で鉄の5倍もの強さがある。地球に植物が誕生してから、長い時間をかけて培われてきた驚きの性質といえる。
▼この次世代素材、樹脂と混ぜて軽量で強度にも優れた材料が作れ、用途は幅広い。家電や自動車、航空機の部品などへの利用が想定されている。裾野が広い自動車産業で採用が進めば、既存の部品会社への影響も出てこよう。普及には製造コストを下げる必要があるなど課題も多いが、企業の勢力図を変える可能性がある。
▼とりわけ新しい素材への期待が高いのが製紙会社だ。紙の原料の木材を分解するノウハウが生かせ、量産技術の開発で先行する。国内は人口減少で紙の需要低迷が深刻になっているが、ここで新技術に磨きをかければ劣勢の挽回にもつながるだろう。強風にも負けない立ち木のように、厳しい経営環境を切り抜けられるか。
要約
[297/300文字]
いま企業の間では、木材を加工処理して取り出した繊維「セルロースナノファイバー」が注目されている。
細さは髪の毛の1万分の1、重さは鉄の5分の1ほど。
一方で鉄の5倍もの強さがある。
この次世代素材、樹脂と混ぜて軽量で強度にも優れた材料が作れ、用途は幅広い。
家電や自動車、航空機の部品などへの利用が想定されている。
普及には製造コストを下げる必要があるなど課題も多いが、企業の勢力図を変える可能性がある。
とりわけ新しい素材への期待が高いのが製紙会社だ。
紙の原料の木材を分解するノウハウが生かせ、量産技術の開発で先行する。
国内は人口減少で紙の需要低迷が深刻になっているが、ここで新技術に磨きをかければ厳しい経営環境を切り抜けられるかもしれない。
[198/200文字]
いま企業の間では、木材から取り出した繊維「セルロースナノファイバー」が注目されている。
この次世代素材、軽量で強度にも優れた材料が作れ、用途は幅広い。
普及には製造コストを下げる必要があるなど課題も多いが、企業の勢力図を変える可能性がある。
とりわけ期待が高いのが製紙会社だ。
木材を分解するノウハウが生かせ、量産技術の開発で先行する。
紙の需要低迷は深刻だが、ここで新技術に磨きをかければ厳しい経営環境を切り抜けられるかもしれない。