2017/5/23付
女子工員たちが昼休みに歌うロシア民謡。寮母さんがいつも口ずさんでいる青春歌謡。NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」に流れる歌に、若い世代も新鮮な印象を抱くらしい。1964年の、伸び盛りの日本を描いた物語に浮かび上がるのは明日を信じる精神である。
▼集団就職で大都会に出てきた15歳が、このドラマのように善意の人にばかり囲まれていたわけではない。他人の飯を食うつらさに泣いた若者も多いだろう。夢破れて道を外した少年少女もいただろう。それでも高度成長期は総じて、「いまよりも上」への階層移動がかなう時代ではあった。だからみんな頑張ったのである。
▼世の中からそんなダイナミズムが失われて久しい。経済力の差は教育格差、学力格差を生み負の連鎖が心配な平成日本だ。教育無償化の議論がにわかに熱を帯びているのも、人々の胸に階層固定化へのうっぷんがたまっているせいかもしれない。やる気と能力があれば誰でも上の学校に行ける仕組みを、というわけである。
▼親にとっても夢みたいな話だが、さて、そうなったら日本人が「ひよっこ」時代の精神に戻れるのかどうか。そもそも高等教育への進学率は、いまや専門学校を含めると8割。成績抜群なのにお金がなくて進学断念という不幸は、昭和の昔ほど多くないだろう。教育格差もその連鎖も、一筋縄ではいかぬ現実のなかにある。
要約
[283/300文字]
伸び盛りの高度成長期は総じて、「いまよりも上」への階層移動がかなう時代ではあった。
だからみんな頑張ったのである。
世の中からそんなダイナミズムが失われて久しい。
経済力の差は教育格差、学力格差を生み負の連鎖が心配な平成日本だ。
教育無償化の議論がにわかに熱を帯びているのも、人々の胸に階層固定化へのうっぷんがたまっているせいかもしれない。
やる気と能力があれば誰でも上の学校に行ける仕組みを、というわけである。
親にとっても夢みたいな話だが、そうなったら日本人がその時代の精神に戻れるのかどうか。
そもそも高等教育への進学率は、いまや専門学校を含めると8割。
教育格差もその連鎖も、一筋縄ではいかぬ現実のなかにある。
[197/200文字]
伸び盛りの高度成長期は上への階層移動がかなう時代ではあった。
だからみんな頑張った。
世の中からダイナミズムが失われ、経済力の差は教育格差、学力格差を生み負の連鎖が心配な平成日本。
階層固定化へのうっぷんがたまっているせいか、教育無償化の議論が熱を帯びているがそうなったら日本人がその時代の精神に戻れるのかどうか。
高等教育への進学率は、いまや専門学校を含めると8割。
教育格差もその連鎖も、一筋縄ではいかぬ現実のなかにある。