[春秋要約170829]臍帯血をめぐる事件は再生医療への信頼を損ね、人間の尊厳をないがしろにしている。<39文字> #sjdis #sjyouyaku

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2017/8/29付

その桐(きり)の小箱は、家でいちばん大切なものをしまうタンスに収められていた子どもたちが生まれたときのへその緒である。なにかの折に、母親がめいめいの箱のふたを開けて見せてくれたことがある。脱脂綿にくるまれたそれは茶色に干からび、不思議な匂いがした
同じような思い出を持つ方はたくさんいるに違いない。へその緒を大切に取っておく風習はきわめて日本的だという。親子のきずなや、生命力の象徴なのだろう。習わしは根強く残り今風の入れ物も登場している。そんな親心にも通じていようか、わが子の臍帯血(さいたいけつ)を民間バンクに預けて将来の備えにする親は少なくない
▼白血病治療に使われ、再生医療の新たな可能性を秘めるのが臍帯血だ。患者らに提供する血液の受け入れや冷凍保存は公的バンクが担っている。かたや民間バンクはあくまで本人や家族のための存在だが、預けたはずの臍帯血が業者の手に渡り、若返りなどの「治療」に使われる事件が起きた。逮捕者には医師も含まれる
▼1回の費用は300万円以上。少量の臍帯血がカネのなる木に化けたわけだ。しかし高額なのをいとわぬ需要もまた、ずいぶんあったという。ため息が出る話だが、こういう問題を放っておくときちんとした再生医療への信頼を損ねてしまう。そしてなにより、へその緒に宿る人間の尊厳をないがしろにするばかりである。

要約

[295/300文字]
へその緒を大切に取っておく風習はきわめて日本的で、その習わしは根強く残る。
わが子の臍帯血を民間バンクに預けて将来の備えにする親も少なくない。

白血病治療に使われ、再生医療の新たな可能性を秘めるのが臍帯血だ。
患者らに提供する血液の受け入れや冷凍保存は公的バンクが担っている。
かたや民間バンクはあくまで本人や家族のための存在だが、預けたはずの臍帯血が業者の手に渡り、若返りなどの「治療」に使われる事件が起きた。
逮捕者には医師も含まれる。

1回の費用は300万円以上。
需要もずいぶんあったという。
こういう問題を放っておくときちんとした再生医療への信頼を損ねてしまう。
そしてなにより、へその緒に宿る人間の尊厳をないがしろにするばかりである。

[192/200文字]
白血病治療や、再生医療の新たな可能性を秘めるのが臍帯血だ。
臍帯血を民間バンクに預ける親も少なくない。
その民間バンクに預けたはずの臍帯血が業者の手に渡り、若返りなどの「治療」に使われる事件が起きた。
逮捕者には医師も含まれる。

1回の費用は300万円以上。
需要もずいぶんあったという。
こういう問題を放っておくときちんとした再生医療への信頼を損ねてしまう。
なにより、へその緒に宿る人間の尊厳をないがしろにするばかりである。