2016/9/24付
いささか季節外れながら、このお化け屋敷に世間の目は相変わらずくぎ付けのようだ。ところは東京都江東区豊洲。築地からの移転が延期になった市場の地下に、誰がなぜ、いつ造ったのか分からぬ空間が埋まっていたのだから怪談じみている。恐怖感たっぷりである。
▼床一面に臭気を放つ水、暗闇、湿気――などと報じられていて、いかにも「出るぞ～」という雰囲気だ。せんだっては共産党の都議が、独自に採取した水から微量のヒ素が検出されたという発表で「猛毒のヒ素が」と口走ったものである。テレビでその会見を見て、やっぱり出たよ～と震えた人も少なくはなかっただろう。
▼しかし、こういうのはお化け屋敷の客寄せみたいな怖がらせではないか。くだんのヒ素は１リットルあたり0.004ミリグラム。厚生労働省が定める水道水の基準、0.01ミリグラムよりずっと少ないのだ。そもそもヒ素はさまざまな食物にも含まれている。世論を煽（あお）り、印象と感情で疑惑追及を進めるのではかえって本質が見えなくなる。
▼次は鬼が出るか蛇が出るか。秋が深まっても騒動は終わりそうにないのだが、ちょっと頭を冷やす頃合いでもあろう。地下空間式それ自体がどこまで危険か。不正解明とは切り分けて早く確かめねばなるまい。このままでは豊洲の市場は立ち往生しよう。巨費を投じた施設がただ古びていく……。そんな光景は本当に怖い。
要約
［283/300文字］
豊洲の地下に、誰がなぜ、いつ造ったのか分からぬ空間が埋まっている。
せんだっては共産党の都議が、独自に採取した水から微量のヒ素が検出されたと発表した。
しかし、くだんのヒ素は１リットルあたり0.004ミリグラム。
厚生労働省が定める水道水の基準、0.01ミリグラムよりずっと少ないのだ。
そもそもヒ素はさまざまな食物にも含まれている。
世論を煽り、印象と感情で疑惑追及を進めるのではかえって本質が見えなくなる。
騒動は終わりそうにないが、ちょっと頭を冷やす頃合い。
地下空間式それ自体がどこまで危険か。
不正解明とは切り分けて早く確かめねばなるまい。
このままでは豊洲の市場は立ち往生しよう。
巨費を投じた施設がただ古びていく……。
［181/200文字］
豊洲の市場でヒ素検出の発表があった。
水道水の基準よりずっと少ない１リットルあたり0.004ミリグラム。
世論を煽り、印象と感情で疑惑追及を進めるのではかえって本質が見えなくなる。
騒動は終わりそうにないが、ちょっと頭を冷やす頃合い。
地下空間式それ自体がどこまで危険か。
不正解明とは切り分けて早く確かめねばなるまい。
このままでは豊洲の市場は立ち往生しよう。
巨費を投じた施設がただ古びていく……。
