2017/6/21付
和洋折衷、白黒つけない。喧嘩(けんか)両成敗――。相反する意見や立場の一方に偏るのではなく、それぞれを調和させるように結論へと持っていく。ときに曖昧との批判を受けたりもするが、日本人は古くからこうした考え方になじんできた。「折中(せっちゅう)の法」と呼ばれてもいる。
▼これもまた、長い折衷の歴史の一コマということであろうか。市場の移転問題について、東京都知事の小池百合子氏が基本方針を示した。市場は豊洲へ移す。だが築地を見捨てるわけではなく、再開発し市場機能を残すという。「豊洲か築地か」でもめていたと思ったら、「築地は守る。豊洲は生かす」が結論だったのだ。
▼豊洲への移転を求めている業者らは歓迎し、築地での営業継続を希望する人たちにとっても半歩前進ということになるのだろうか。もちろんこれですんなり解決、というふうにはいくまい。懸案となっている豊洲の土壌の無害化はなお道半ば。築地の再開発だって「食のテーマパーク」という看板が掲げられているだけだ。
▼脈々と続く折衷の思想は、江戸時代には折衷学派という儒学の一派を生んだ。小池氏のもとにも都民ファーストの会として候補者が集い、この移転案を公約に都議選を戦うことになる。折衷構想が導く先は「一挙両得」なのか、「一兎(いっと)をも得ず」なのか。政争に惑わされることなく、街づくりの行方をしっかり見定めたい。
要約
[297/300文字]
相反する意見や立場の一方に偏るのではなく、それぞれを調和させるように結論へと持っていく。日本人がなじんできた「折中の法」。
市場の移転問題について、東京都知事の小池百合子氏が基本方針を示した。
市場は豊洲へ移す。
だが築地を見捨てるわけではなく、再開発し市場機能を残すという。
「豊洲か築地か」でもめていたと思ったら、「築地は守る。豊洲は生かす」が結論だったのだ。
豊洲への移転を求めている業者らは歓迎し、築地での営業継続を希望する人たちにとっても半歩前進ということになるのだろうか。
もちろんこれですんなり解決、というふうにはいくまい。
折衷構想が導く先は「一挙両得」なのか、「一兎(いっと)をも得ず」なのか。
政争に惑わされず、街づくりの行方をしっかり見定めたい。
[196/200文字]
日本人がなじんできた「折中の法」。
市場の移転問題について、東京都知事の小池百合子氏の基本方針は「築地は守る。豊洲は生かす」が結論だった。
豊洲への移転を求めている業者らは歓迎し、築地での営業継続を希望する人たちにとっても半歩前進ということになるのだろうか。
もちろんこれですんなり解決、というふうにはいくまい。
折衷構想が導く先は「一挙両得」なのか、「一兎(いっと)をも得ず」なのか。
政争に惑わされず、街づくりの行方をしっかり見定めたい。